音のない雷
そういえば、金曜日の夜、仕事が終わって最寄りの駅から降りたら、駅前に人だかりがしていて、なにやらみんな空を見ていたのだ。振り返ってみたら、音のない稲妻が、なんどもなんども薄暗い夜空を走っていた。当然だが、雨も降っていないし、雷に特有の音もない。雷ではなく、プラズマ放電現象だったのだろうか。
なんというか…とても不思議で異様で、そして、畏怖に値する光景だったように思う。なにか、天変地異が来る前触れ、と言われたら信じてしまいそうなほどには、空を見上げる人々の様子には、興奮や好奇心の他に、畏れがあったようにも見えた。(もちろん、現代の風俗として、けっこうな人数が携帯のカメラでその様子を撮影していたが、それでも、その行為にすら畏れがあったように見えたのだ。)集まっている人々の数に比して異様な静けさ。知り合い同士が交わす会話も囁き程度で、みじろぐことも躊躇わせるような空気が、そこにはあった。
雷は、神様の怒りの鎚だという。だから「かみ・なり」。
けれど鳴らない稲妻は何に例えればよいのだろう。あれは、人々の言葉にならない鬱屈したエネルギーが、開放を求めて空をのたうつかのように見えた。今、このエントリを書きながら、ふと、あれは八岐大蛇なのかもしれない、と思った。